電脳道楽館S ミスティック・ミュウ/第3話 ミスティック・ミュウ誕生! #3 セントヘブン  

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第3話#2ヘ戻る−

セントヘブンへ向けての移動が続いていた。
しばらくすると、木々の向こうが明るくなってきた。大樹林を抜けたのだ。
大樹林を抜けると、驚くべき光景が目に入ってきた。
荒野の向こうに燦然と輝く物体があった。
陽炎に揺らぎながら、銀色に輝く城のような物が見えたのだ。

まさと「ぎ、銀色。・・・・・まじですか?」
レーア「うん。セントヘブン。光ってるのは、魔法銀を塗ってあるから。」
ミュウ「し、しばらく見ない間に趣味の悪い城になっちゃったもんね・・・・。」
カイゼル「見るに耐えんな。」
マリン「うぁ。私もはじめて見た。お店大丈夫かなぁ・・・。」
レーア「あ、下町は大丈夫。城砦内部だけだから。」
マリン「ほっ。よかった。」
タニア「きんきらにゃー。」
まさと「あ、猫にはウケたみたいだなぁ。」
レーア「城だけじゃなくてね。鎧もきんきらだよ。冗談じゃない。」
キリー「そうですなぁ。確かに、魔法耐性は上がるのですが。」
ターマル「限度ってものがあるのだな。お陰で民は上納金で大変なんだな。」
マリン「ひー。上納金! 聞いてないわよぉ。店があるだけでも?」
キリー「ああ、そうですね。お店のほうへ督促状が行っているものと。店だけだと多少安くはなりますが。」
マリン「い、いくら? あ、町外れの占いの館だけど。」
キリー「あー、あそこの。そうですね、50000ゴールドぐらいかと。」
マリン「嘘。そんなにすぐ融通効かないわよ・・・・。ほとんど店開けてなかったし。」


マリンさんがかなり慌ててるので、早足でセントヘブンへ向かうことになった。
慌ててるせいもあって、かなりのハイペースだった。ほとんど走らされた気がする。
下町に差し掛かる頃には相当息が上がっていた。

下町を歩いていると、やはり、家並みから垣間見える銀色の城砦が目にまぶしい。
銀色と言うと、食器など割りと高価なイメージがあるものだが、城がこうだとありがたみも何も無く、ただ、下品なだけだった。
町の端にあるということもあって、マリンさんの占いの館にはすぐについた。

マリン「ぎゃぁぁぁぁーーーー........」

慌てて店に駆け込んだ、マリンさんの悲鳴が聞こえた。

まさと「ああ、すげぇ額の請求書かなんか見つけたんだろうなぁ。」
ミュウ「そうね・・・。」
カイゼル「むぅ。私が様子を見てこよう。先にまさと殿の準備を。」
ミュウ「あ、そうね。」
カイゼル「その先に、ベルというレストランがある。そこで落ち合おう。」
ミュウ「あーい。」


まぁ、マリンさんはカイゼルと親子だって話だし、気にもなるわなと言う事で、別行動をとることにした。
予定では、城を訪問する為に、この街の店で、鎧などを適当に見繕うことになっていた。

ちょっと行ったところに、防具屋があったので、そこで、適度に使いこなされた防具を一式揃えてもらった。
新品でなく、使いこなされた物を選んだのは、そのほうが好印象であろう、と言う判断だった。
たしかに、新品の鎧じゃ疑われるだろう。
さすがに店員に銀ピカの鎧を薦められた時には苦笑いしたが。

カイゼルに言われた通り、ベルという店に入る。
レーア達は用があるということでここで別れた。
待っている間、何も頼まないわけにもいかないので、飲み物を適当にミュウに注文してもらった。

飲み物が出てきた頃合だった。

???「相席、かまわない?」

一人の少女が、声を掛けてきた。
見まわすと、そう店の中が混雑していると言うのでもなく、むしろ店は閑散としていた。

まさと「え、構わないけど、他に席は・・・。」
???「実は、あなた達に用があるの。迷惑?」


疑問に思っていたところへ、久々にファルネの声が伝わってきた。

ファルネ「パール、ダ。」

一瞬何を言われたのか分からなかったが、しばらくして思い当たることがあった。
魔導科学のパール。
あのヘンなコスチュームこそ身に着けていないが、確かに、聖地ノスパーサで襲ってきた、あの、パールだった。
そのパールがなぜ昼日中から、襲ってくるでもなく、声を?

まさと「おい、ミュウ。」
ミュウ「え・・・・あ。」


ミュウもやっと気がついた様だ。

まさと「パール・・・か?」
パール「ええ。やっと気がついた?」
ミュウ「なっ!」
パール「今日は争う気は無いわ。」


ゆっくりと、パールは席につくと、自分も飲み物を注文し、何を言うでもなく、飲み物が来るのを待った。
くさなぎ目当てなのだろうが、襲うでもなく話そうと言うのは、一体どう言うことだろう。

パール「実は昨日からずっと様子を見させてもらってたの。」

飲み物を一口、口につけると、パールはゆっくりと話し出した。

パール「ほんとに日本人だったとはね。」
まさと「あ? なんだ?」
パール「私もそうよ。」
まさと「なに!?」
ミュウ「ええ?」


パールが日本人。これは一体。

パール「もっとも、私がこっちに来たのは10年ほど前だけど。バスで移動中に事故にあって、気がついたら見知らぬ野原で放り出されていた。」
まさと「そうなのか?」
ミュウ「う、嘘じゃないの?」
パール「本名はたまみ、向井珠美。これでも日本じゃ有名人だったんだけど、覚えて無い?」
まさと「なに? 向井、向井、珠美、珠美、たま・・・・あ。」


思い当たった。
10年程前のこと、TVの奇才少女の特集モノ。それに出ていたのが”向井珠美”だった。
翌年、取材の為のマイクロバスでの移動中に転落事故があり、次々と遺体が回収される中、その向井珠美だけが遺体が見つからなかった。
転落中に投げ出され、そのまま川へ流されたか、山の獣に食われたかしただろうと言われていた、世界一の記憶力の少女。

まさと「世界一の記憶力の少女。」
パール「あ、TV見てくれてたのね。知らないとか言われたらどうしようかと思ってた。」
ミュウ「し、知り合いだったの?」
まさと「えっとまぁ、こちらから一方的にだけど、とりあえず、おれと同じ国出身らしい。」
パール「そういうことね。」
ミュウ「つ、ついていけない。まさと、まかせたっ。」
まさと「いや、まかされてもだなぁ、まぁ、話し聞くしかないけどなぁ。」


パールも勇者として呼び入れられたのだろうか、それも10年も前に。
とにかく、謎が増えてしまった。ここは聞くしかない。

まさと「で、その向井さんは、俺達にどう言う用なんだ?」
パール「それよ。今日は、パールとして、あ、パールって言うのはこっちで拾われた時にもらった名前ね。そのパールとしてでなく、向井珠美として話しに来たの。」
まさと「本音の話しと受け取っていいのか?」
珠美「いいわ。信じがたいとは思うけど。」
まさと「まぁ、とにかく聞いてみるか、で?」
珠美「あなた達が何を望んでるかで話しは変わるんだけど、日本へ帰る方法についての相談。」
まさと「なにっ!?」
ミュウ「えっと。あ、とりあえず、聞いてるからよろしく。」
まさと「帰る方法があるのか?」
珠美「あると思うわ。実証はまだ無いけど。価値はある。あるはずよ。」
まさと「思う?」
珠美「10年間で星の動きを調べてみたの。」
まさと「で?」
珠美「ほぼ、地球と同じ星が観測出来るわ、ただし、半年、見られる星にずれがあるみたい。」
まさと「なんだ? どう言う意味だ?」
珠美「太陽を中心に、水星、金星、そしてこのティラ、そして、火星、木星、土星、と全部の惑星が揃ってるのと、北天の北極星をはじめ星々の構成がまったく同じなの、見られる時期が違うことと、太陽との位置関係が地球とまったく逆なことを除いては。」
まさと「それは・・・・。すまん。もそっと噛み砕いて説明してくれ。」
珠美「簡単に言うとね、このティラは太陽を中心に地球と同じ軌道を回り、太陽を挟んで地球と反対の位置にある双子星、伴星。そういったものらしいのよ。仮説の域を出ないけど。」
まさと「じゃぁ、ここは太陽系だってのか?」
珠美「そうだと思えるの。実際に北天か南天、太陽をかすめて地球が見える位置まで行って見ないと、確証とまでは言えないけれど。」
まさと「そうか。そんな可能性が。ある、のか。」
珠美「太陽の向こう側なら地球からも観測できないし、今まで誰も知らないのもうなづけるわ。」
まさと「いや、けど、航空宇宙局、NASAだっけ? ああいうところなら、衛星飛ばして・・・。」
珠美「知ってるかもしれないわね。けど、こんな非科学的な物理法則が横行する世界。公表はしないと思うけど。」
まさと「あ、それは一理ある。魔法が存在するなんて。」
珠美「そういうことよ。地球の科学が揺らぐわ。」


太陽の裏側にこの星がある。驚くべき話しだが、説得力はある。
さっきから、話している中で、恐らく日本に、いや、少なからず地球に住んでいたことが無いと知らない情報がことごとく含まれている。
信じていい話しなのだろうか。

ミュウ「えーっと、で、結局どうなの? どう言う話しなの?」
まさと「ああ、勇者話とは関係無しに俺の国に帰れる可能性が出てきた。」
ミュウ「へぇ。それはそれは。けど、信じていいの?」
珠美「こればっかりは、信じてもらうしかないわ。」


で、ここで、はたと気がついた。どうやって、地球まで行くのだ。ロケットや宇宙船などは持ち合わせてはいない。

まさと「ああ、そうだ、たとえ、太陽の裏側だと分かっても、分かっただけだ。それだけじゃ帰れない。」
珠美「ええ、宇宙船か、それに変わる手段がいるわ。」
まさと「・・・・なるほど。太陽の裏側説。これは信じてよさそうだな。で、手段の目処は?」
珠美「あるわ。その準備を私はやってるのよ。魔導科学の技術力で。」
まさと「あ、そんなことに転用できるのか、魔導科学って。」
珠美「出来るわ。原動力が電気とかじゃなくて、このティラの大気に含まれる、マジェスティックスに変わるだけで、いろんな物が作れるの。」
まさと「なんだよ、その、まじぇ・・・。」
珠美「マジェスティックス。平たく言うと、魔法実効成分の小さな目に見えない粒子。魔法力とか言いかえられてることが多いわ。」
まさと「ああ、それがあるから、魔法が使えるとか、そういうものか?」
珠美「そう。たとえば、簡単な知能を持ったロボットも作れるわ。」
まさと「ロボット!」
珠美「ええ。さっきからそこにいるんだけど、気がつかない?」


と珠美が指差した方向に、確かに何かがいた。
円錐状のパーツを組み合わせた人型に近い物。単純な顔に見たてた部品の納まった頭部。マジックハンドのような両腕。頭の後ろの襟のような部品。
たとえるならそう、”3mの宇宙人”。

まさと「うわ、なんだこれ。」
珠美「私がこっちで初めて作ったもの、”マーガレット”よ。」
まさと「う、動くのか?」
珠美「マーガレット、おいで。」


珠美がそう呼ぶと、かすかにキュラキュラとキャタピラのような音を立てて、それは近づいてきた。

まさと「うわっ、すげぇ、音声認識で動いてる!」
珠美「面白いでしょ?」
まさと「俺でも動かせるか?」
珠美「あ、今は無理だけど、私がそれを認めれば。」
まさと「や、やらせてくれっ!」
珠美「ふふっ。いいわ。マーガレットしばらくこの人の命令を聞いてあげて。」
マーガレット「ハイ。」
まさと「うわ、喋ってるし!」
珠美「もう、命令しても大丈夫よ。」
まさと「あ、ああ。えっと、・・・右腕を上げろ。」


俺がそう言うと、マーガレットはすっと、右腕を上げた。

まさと「おお!」
珠美「ね。」
まさと「んじゃ、今度は、右腕下げる。左上げる」


マーガレットは、言われた通り、右腕を下げて、左腕を上げた。
左腕とは言っていないのに、左腕を指していると判断、ちゃんと左腕を上げるあたり、論理機能は優秀だ。

まさと「左下げて、右上げて、右下げないで、左上げる。」

正常に読み取れるなら、万歳の格好になる。マーガレットは万歳をした格好で停止中。
思わず万歳してしまう俺。

まさと「うおぉぉっばんざーい。ずげー。」
マーガレット「バンザーイ。」


マーガレットも俺の動きに合わせて万歳している。

珠美「あのねぇ、旗揚げゲームなんて、今ごろ誰もやらなくなってるでしょうに。」
まさと「おお、旗揚げゲームも知ってるとは。こりゃ、話し信じてもいいか。」
ミュウ「うう、ついていけない・・・・・。」


ここで、珠美はこちらに向き直る。

珠美「でね、この魔導科学を駆使すれば、宇宙船だって作れるのよ。飛行艇は今では簡単に作れるようになったし。」
まさと「じゃぁ、こないだの鎧は、魔導科学で作った、パワードスーツとか、そんなのか?」
珠美「ええ。これがそのユニットよ。」


そう言うと、セカンドバッグから何か金属で出来た塊を取り出し、テーブルの上に置く。

まさと「こ、これが? あれなのか?」
珠美「そう。ソーサルブースターって言ってたの覚えてる? それがこれよ。」
ミュウ「これが? あれなの? うそ?」


ミュウは、考えが及ばないらしく、ソーサルブースターをまじまじと眺める。

まさと「間違いなく地球生まれだな。つまりは、ヒーロー物とかの変身とかそういう概念のもんだろ、これ。」
珠美「そう。」
ミュウ「へんしん? なに?」
まさと「これを使うと姿や能力が変わるんだよ。」
ミュウ「へー。で、そろそろ本題じゃないの?」


本題と言われて、気がついた。
そらそうだ。タダで、情報はもらえるはずが無い。何か条件があるのかも?

まさと「ああ、そうか。で、俺達になにを望むんだ?」
珠美「まぁ、そういうことになっちゃうんだけどね。」


俺とミュウは、条件を固唾を飲んで待った。

珠美「邪魔をしないで欲しいの。アルヘルド文明再興の邪魔を。」
まさと「え?」
ミュウ「ええっ!?」


結局はそういうことになるのか。
アルヘルドの再興、魔導科学文明の再興。ミュウの親父さんたちが止めようとした物、それが再興するとどうなるのか。
それは、さっき出会うことになったこの世ならざる魔獣の復活。このことを指すのではないのか。
これは、うんと言うわけには行かない。

まさと「ちょっと待ってくれ。」
珠美「なに?」
まさと「アルヘルドが再興するってことは、魔獣がわんさか出てくるってことじゃないのか?」
珠美「ええ、悪意を持って、生み出せば、魔獣は沢山作ることが出来るわ。けど、それは、制御できる物だから、作らないで済ませることも出来るし、便利な道具としても利用できるのよ。それをコントロールする為に魔導科学は発展してきていたらしいの。」
まさと「発展って、それじゃ、なんでアルヘルド騒乱なんて言われてるんだよ。」
珠美「あれは、先導者が悪意を持って魔導科学を使ったからよ・・・・。」
まさと「おい、そりゃぁ、奇弁とかいう奴その物だぞ。」
珠美「とり方はさまざまだと思うわ。けど、現にマーガレットが目の前にいるでしょ。これは、魔獣が生まれるのと同じプロセスで作られたのよ。マーガレットはそんなに危険?」
まさと「こ、これが、魔獣と同じ?」
ミュウ「え? あ? なに? これ、魔獣なの?」


もう何がなんだかわからなくなってきた。
珠美が地球からこっちへやってきたのは信じていいだろう。しかし、魔導科学のこと、アルヘルドのことを、そう好意的に解釈していいものかどうか。俺には分からなかった。
ふと横のミュウを見ると、ミュウは、うつむいて、拳を硬く握り締めていた。

まさと「おい、ミュウ・・・。」
ミュウ「冗談じゃないわっ!」


突然、堰を切った様にミュウが立ちあがる。

ミュウ「何が信じろよ! なにが魔導科学よ! 何が悪意を持った先導者よ! その為に大勢の人が死んだんじゃない! どうしたらそんな物が信じられるのよっ!」
珠美「過去は、間違った過去は存在したし、消せもしないわ。けど、魔導科学はあくまで道具としての存在なのよ。魔導科学その物に悪意は無いわ。」
ミュウ「じゃぁ、今でも、人の近付く事の出来ない、アルヘルドの領域はどうなのよ! アレをどうにかしてから言いなさい!」
珠美「あれ、は・・・・マジェスティックスの超飽和状態が生んだ、人の立ち寄れない聖域よ。今となっては、飽和が解消するまで待つしかないわ。」
まさと「そ、そんな場所が。アルヘルドの跡地ってそんな状態なのか?」
ミュウ「そうよっ! 大陥没が出来てそこへ魔法力が溜まったままになった危険な場所よ。うかつに入ろうものなら、魔法障壁に触れたのと同じ。生き物は、一瞬で塵になるわ。」


二の句がつげなかった。
アルヘルド騒乱はそんな傷跡を残していたのか。

まさと「すまねぇな。どんなに正論かざされても、うんとは言えない。アルヘルドの飽和状態だったか? それが解消できないんなら、魔導科学は便利な道具なんかではあり得ない。俺はそう思う。」
珠美「そう。分かってくれると思ってたんだけど。仕方ないわ。今日はこれで退散します。」
まさと「・・・次に会うときは・・・・・。」
珠美「敵、ってことになるでしょうね。それもすぐ会うことになるでしょうね。」
まさと「そうか。」


店を出ていくパールを追いかけようとするミュウを俺は止めた。

ミュウ「なんでっ!」
まさと「すまん。けど、今は、同じ日本人としてあいつはここに来てた。だから、今回だけは。」
ミュウ「あ、まぁ、分からないでもないけどね。甘いよ、それ。」
まさと「だろうな。けど・・・。」
ミュウ「いいよ。なんとなく分かる。分かる気がする。けど・・・・・。」
まさと「なんだ?」
ミュウ「同郷の麗人の払いはどうするの。払わずに行ったわよ。」
まさと「・・・・・うわ。すまん。気がつかなかった。」


どばきっ!

思いっきりミュウにどつかれた。
と、そこへ、なんと、パールが戻ってきた。

パール「払い、忘れてた。」
ミュウ「え?」
まさと「・・・・・お。」


自分の飲んだ物の代金の払いを終えると、そそくさとパールは出ていってしまった。
根は悪い奴ではないのかもしれない。騙されて動かされているのか、気がついていないのか・・・。

ミュウ「用心しておくに越したことは無いわよ。悪いけどね。」
まさと「ああ、わかってる。」


しばらくして、カイゼルが合流してきた。
マリンさんは、何とか、上納金を用意して、払いに行ったそうだ。
パールのことは、なぜか、カイゼルに切り出せなかった。ミュウも話さなかった。俺はカイゼルに話すにはお粗末な話しだと思ったから話せなかった。敵を見逃したのだから。
ミュウは、いや、ミュウも同じかもしれない。
説明するにしても、とっぴな話ばかりで、今話すべきで無い気もしたってのもある。
そうして、パールの話しはしないまま、俺達はセントヘブンの国王ヨハン・ヘブナートに謁見する為に、城砦へ向かった。

城門につくと衛兵らしいのに止められた。
それはそうだ。はいはいどうぞと、城の中に入れてもらえる筈が無かった。
ミュウが掛け合ってくれてるが、衛兵は首を縦に振らない。
戻ってきたミュウが小声で言うには、勇者が現れたことで、戒厳令が発動してるんじゃないかとそう見て取れたらしい。
以前は、エルフの村の住人、まして、長老の家系、グレンハートの家系であれば顔で通れたらしいのだが、それがダメだと言うことになってしまっていた。
何か、良からぬことが、この城で起こっているのか。

まさと「どうするよ。おい。いっそのこと俺が勇者だって乗りこむか?」
ミュウ「ばか! 大騒ぎになるわよ! 既に勇者が中に一人いるのよ!」
カイゼル「その通りだ。ましてや、そんな方法で入ったら、その中の勇者との一騎打ちが待っているだけだ。死ぬぞ。」
まさと「あ、それもそうだ。俺の実力じゃやばいかもな。」


そうこうしている内に、城門が少し開いて中から子供が、いや、どこかで見た子供だった。
城門からさっきまで一緒だったレーアが顔を覗かせている。

レーア「あ、遅いと思ったら。なにやってるのこっちこっち。」
まさと「なんだ? いや、衛兵が通してくれないんだけど、お前どうやって入ったんだ!?」
衛兵「き、貴様! なんという口を! 無礼打ちにするぞ!」
レーア「こら、なんてこというの! 私の客だよ! 通せって言ってあったでしょ!」
衛兵「はっ!? こ、この者達がですか?」
レーア「あんた、名前は?」
衛兵「は。はいっ。ヘルツェゴ・ビナでありますっ。」
レーア「あい覚えた。あんたクビね。あんたみたいに不義理極まりない奴はお父様に言いつけてあげるから覚えときなさい。」
衛兵「でっ、殿下、そ、それだけは、幾重にも頭を下げさせていただきますので、平にっ!」


衛兵は、とたんに態度を変え、レーアどころか、こちらにまで、土下座してきた。

レーア「まぁいいでしょう。次は無いからね。」
衛兵「ははぁ、殿下、ありがとうございますっ。」
カイゼル「そうか! 聞いた名前だと思ってはいたが。レーア・ヘブナート王女か!?」
まさと「なにぃぃ!? おうじょぉぉおお?」
ミュウ「はっ。あたしも今の今まで・・・・。確かに王女の名前ってレーア・・・・。うわぁ。」
レーア「えへへ。そーゆーこと。王女って言っても第四王女、末娘だからね。遊び放題だよぉん。さぁ、入って入って。セントヘブン城へようこそぉ。」


私設警備隊とか言っていたレーアが、まさか、セントヘブンの王女だったとは。
そんなこんなで、難関かと思われたセントヘブン入場はいとも容易く、しかもVIP扱いで達成してしまった。
困っている人は助けておくものである。情けは人の為ならず。回り回って我が身を助く。か。

城の中に入るとするすると謁見の間まで案内されてしまった。
なんだかうまく行きすぎて怖いくらいである。

ヨハン「その者達か。レーアの魔獣狩りを手助けしてくれた者達と言うのは。」
カイゼル「は。微力ながら。」
ヨハン「御苦労だったのう。どれ、名前を聞かせてはもらえぬかの。まずは、レディファーストじゃ。」
ミュウ「ヨハン王には久しくお目に掛かります。ミュウ・グレンハートです。」
ヨハン「おお! そうか! やはりラルフの娘か! そうかそうか。その鎧、ラルフの使っていた物か?」
ミュウ「はい。手を入れて使えるように致しました。今となっては父の形見です。」
ヨハン「そうか。結局、ラルフは戻らなかったのじゃな。良い剣士だったものを・・・・。」
ミュウ「ありがとうございます。きっと、父も喜んでくれているでしょう。」
ヨハン「ふむ。で、その白い鎧の剣士殿は?」
カイゼル「はっ。ローグ・カイゼルと申します。マスクをはずせぬ御無礼をお許し頂ければ。戦の最中に火傷を負いました。醜きものをお見せするのも失礼かと存知ますゆえ、なにとぞ。」
ヨハン「そうか。火傷を負っておるのか。片目も光を失っておる様じゃが。」
カイゼル「はい、お察しの通り、私の右目は開くことすら出来ませぬ。」
ヨハン「あい分かった。マスクはそのままで良い。で、そちらの青年は?」
まさと「あ、宗方まさと。別の世界から来た学生。」
ミュウ「なっ!」
まさと「あ、いけね。つい。」
ヨハン「なに! 別の世界!? よもやそなた!」
レーア「そ。勇者様御一行。」
まさと「あ。」
ヨハン「ぬぬぬっ!」


しまった。適当なこと言って場を凌ぐべきだったか。
ミュウはこちらを睨んでるし、カイゼルは難しい顔をして宙を見つめてる。
謁見の作戦会議をする暇もなく、通されちまったからなぁ。
さて、どうした物か。

ヨハン「誰か! 竜崎殿をこちらへ!」

うわぁ、やべぇ、勇者呼ばれちまった、どうするか?

ミュウ「よ、ヨハン王! 勇者と言うのは可能性が有ると言う程度でございます。その確認をしたくこちらへ参った次第です。」
ヨハン「まぁまて。竜崎殿のことはそなた達も聞き及んでおろう?」
ミュウ「あ、はい。風の噂に。」
ヨハン「竜崎殿の反応も見たいでな、しばしまたれい。」


は、反応を見てどうしようと言うのだ。

カイゼル「勇者の登場を待つしかなかろう・・・。」
まさと「なんか、死刑台に上った気分なんだが。」
ミュウ「下手すると、そうなるかもね。勇者次第。」
まさと「ううっ。」
レーア「お父様。私の客人ですからね。」
ヨハン「分かっておる。皆まで言うな。」


しばらくして、鎧の音を響かせながら勇者らしき男、竜崎が入ってきた。

竜崎「ヨハン王、何事ですか? 火急の用件とは。」
ヨハン「おお、竜崎殿、ほれ、またしても勇者が現れたぞ! これで戦力倍増間違い無しじゃ!」
まさと「なっ!?」


いや、度肝を抜かれると言うか、そういう受け取り方だったのね。

竜崎「ほほう。あの白い鎧の・・・。」
ヨハン「いや、その横の。背の低いほうじゃ。」


うわ、なんだか、実力のないのが既に見切られている気がする。

竜崎「勇者だと言うのは本当か?」
まさと「う。日本からこっちに飛ばされてきた。勇者かどうかは自分でもわからない。」


カマをかけてみることにした。日本と言う言葉に反応してくれるといいが。

竜崎「ほぉ。なら、一度手合わせして見るか。面白そうだ。」

死刑台の階段を一歩上ってしまった気がする。

ミュウ「まさと・・・・万が一の時は骨、拾ってあげるから・・・。」
カイゼル「む。仕方あるまい。」
まさと「ぐぅっ。2人とも、じ、地獄で待ってるぜ。」


おどおどしてる間に死刑台、いや、手合わせの為の会場が用意されてしまったらしい。
謁見の間のすぐ横の広間に通されてしまった。

竜崎「実剣で良いな。実力が知りたい。」
まさと「あ、ああ。」


また階段を一つ。

竜崎「俺は盾は使わない主義だがそっちもいいか。」
まさと「ああ。」


馬鹿か俺っ。

ヨハン王「では、そろそろはじめようと思うが、どちらもよろしいか?」
竜崎「ああ、俺はいつでも良いぜ。」
まさと「こ、こっちもだ。」


階段を上り詰めてしまった。もう出たとこ勝負と言う奴か。

ヨハン「双方構えっ」

くさなぎを鞘から抜いて構える。竜崎は両手で剣を持ち真正面に持ってくる。剣道?
やばい。向こうのほうが場数は上かもしれない。

ヨハン「はじめっ!」
竜崎「てりゃぁぁーーーーっ!」


合図と同時に剣を真正面に掲げた竜崎が踏みこんでくる。
この間の詰め方は剣道だ。こういう進み方を見たことがある。
面か、小手か?
俺はくさなぎを移動しやすい様斜めに構え腰を低くして待つことにした。
とにかく一撃目を止めるか、かわすかしなければ。

竜崎「めーーーーーんっ!」

一瞬笑いそうになった。口に出すか。口に。
お陰で、次の手を打ちやすくなった。

がきぃいいいん!

強烈な金属音を響かせ、竜崎の面を何とか受けとめた!
と、ぎりぎりと剣を押し付けながら、竜崎が小声で話しかけてきた。

竜崎「お前、どこの出だ?」
まさと「そうか、俺は東京、故郷は奈良だけどな。」
竜崎「俺は、東京生まれの東京育ちだ。なんの因果かしらねぇけど、勇者でいるうちは好きが出来る、上手くやろうぜ。」
まさと「なっ!? お前まさか、わざと面とか言ったか?」
竜崎「あ、ばれてるか。そうだ。受けやすい様にな。次、俺小手取りにいくからな、剣で受けて、その剣落とせ。それで、良い勝負だったで終りだ。」
まさと「なに!?」
竜崎「な、上手くやろうぜ、同輩!」


なんだかむしょうに腹が立った。コイツは勇者を語ってる。そう思った。
そう思っちまったらもう止まらない。

まさと「本気で来いよ。」
竜崎「なに? 怪我するぜ、てきとーにやって、上手く勇者やってりゃいい目見れるんだっての。」


また腹が立った。もう止まらない。

まさと「ふざけるなぁっ!」

ジャキュゥゥ....ン

おれは竜崎の剣を薙いではじいていた、よろける竜崎。
とたんに竜崎の目の色が変わる。向こうもマジになってる。
間合いを取り再び切りこんでくる竜崎。今度はタイミングを取る掛け声もない。

まさと「ままよっ」

竜崎は剣を薙いで来た、が、ミュウのレイピアに比べると遥かにゆっくりとした動きに見えた。
難なく竜崎の剣はかわすことが出来た。
たった4日間だったが、しごかれた甲斐はあったようだ。
しかも、剣を振り切った竜崎の肩口に隙が見えた。恐らく、あの特訓がなかったら、見えなかった隙だろう。
俺は迷わず、その隙にくさなぎをねじ込んだ。

ビシュウッ

竜崎の鎧をかすめてくさなぎがすべる。
呆然として、動けない竜崎。

ヨハン「ん! それまで!」
ミュウ「っひゃぁ!」


ミュウが奇声を上げる。
俺は、ゆっくりとくさなぎを引き戻すと、鞘に収めた。
竜崎も、剣を杖代わりにゆっくりと態勢を立て直す。
その顔にはあからさまに不服が見て取れた。

ヨハン「良い勝負であった。」

どこがだ。と思いつつ、それがお世辞であるのはヨハン王の顔を見てよくわかった。
引きつった笑いを浮かべていることをヨハン王自身気がついているかどうか。
竜崎はというと。
さっきとは打って変わって花でも背負ってそうな笑顔を浮かべている。

竜崎「いやぁ、良い勝負でした。さすがだ。また手合わせをお願いしますよ。」
まさと「どーも。」


コイツと二度と手合わせなんかしたくない。
と思った瞬間走り寄ってきたミュウのボディーブローを食らって、俺はその場に転がった。

まさと「うぐわぁ!」
ミュウ「この粗忽者ぉ!」
カイゼル「零点。」


2人とも、好きな事言ってくれる。

ミュウ「本気出してどうすんの! こういうのは後から来たあんたが勝ちを譲るもんでしょうがっ!」
まさと「う、あ、いや、しかし・・・・。」
竜崎「はっはっは。良いんですよ。まっすぐで非常にいい。見習いたい。」


また、竜崎が花を背負って笑ってる。
きっと、コイツの腹の中はいまごろ、その表情と裏腹に煮え繰り返ってるに違いない。
ざまぁみれ。

とまぁ、そんなこんなで、国王も納得してくれた様だ。
俺達は一人一部屋、迎賓館の部屋をあてがってもらえる事となった。

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